
社会基盤と発想の融合による位置情報サービスの無限の可能性------ ユビークリンクに聞く
ユビークリンク代表取締役社長
増田 有孝
鈴木 潤一(すずきじゅんいち):日本情報処理開発協会 研究員
携帯ナビゲーションサービスに世界初の「プローブ交通情報」を持ち込むなど、先進的な取り組みで事業展開をしているユビークリンク。彼らの提供するロケーションプラットフォーム事業とはどのようなものなのか、プローブ交通情報システムの概要から今後の展望まで、JIPDEC鈴木 潤一が、代表取締役社長 増田 有孝氏 に聞いていく。
鈴木) 御社の設立背景とサービスの概要を教えてください。
増田氏) ユビークリンクは野村総合研究所のグループ会社として設立された会社です。野村総合研究所では、2006年から、プローブ交通情報を事業化できないか検討をしていました。プローブ交通情報は、世の中では10年前から技術的な研究が行われていましたが、事業化に苦労されていました。野村総合研究所では、プローブ交通情報を携帯ナビゲーションサービスに使いながら認知を高めて、次のステップへ進めようという事業化ストーリーを描き、消費者向け携帯ナビゲーションサービス「全力案内!」事業に取り組むことにしました。
しかし、野村総合研究所は企業向けのサービスをしている会社で、最終消費者向けのビジネスとはビジネスサイクルも違い、発想の柔軟なメンバーを集める必要もあると考え、新たにユビークリンク社を別途、設立することにしました。
ユビークリンクという社名は、ユビキタスの原語であるラテン語の「ユビーク」に由来します。ユビキタス社会において、色々なものや多様な人々をつなげていきたい、との想いを名前に込めました。位置、時間に価値をつけ、楽しいおでかけを演出する事業に取り組む会社です。

ユビークリンク代表取締役社長 増田 有孝氏
鈴木) プローブ交通情報とはどのようなものなのでしょう?
増田氏) 車1台1台をセンサーにみたて、大量の車の位置データおよびその推測速度から、道路の渋滞・混雑などの意味を転換した情報のことです。 従来、道路交通情報はVICSと呼ばれる主要幹線道路に設置されたセンサーから集めた情報で作られていました。いたるところにセンサーを設置・維持するには、多額の費用をかける必要があるので、別のやり方をしないと行き詰まる懸念を感じています。
主要幹線道路を走っていて渋滞に遭ったときに、裏道に逃げたのにそちらも渋滞で、かえって時間がかかったという体験をされた方は多いと思います。そのようなことが起こらないためにあらゆる道路の混雑状況がわかるように、動いている車をセンサーにして、車が走る道路すべての交通状況が分かる仕組みを構築したのです。
また、特別の機器を道路に設置しなくても、安価な携帯電話のGPS等をセンサーにしているところが、社会的基盤として、経済的負担に配慮した仕組みといえます。
私たちは、一般の車すべてをセンサーにするのは難しいと思い、最初はタクシーにセンサーになってもらい、ある程度便利な交通情報の認知が進んだところで、一般の協力者を増やして、プローブ交通情報作りを進めています。
具体的には、現在、全国の主要政令都市の約1万3000台のタクシーと契約し、そこからデータを頂き、交通情報を生成しています。また、「全力案内!」を利用頂いている方々のカーナビの位置情報を、数秒に1回取らせて頂き、それに基づいて交通情報を生成しています。
鈴木) 今のお話で、VICSはセンサーを道路側につける、従来の発想の、センサーを固定化させるという考え方ですね。一方、車にセンサーを乗せるという逆転の発想は、ちょうどユビキタスコンピューティングが発達し、ケータイ電話やiPhone等のスマートフォンを含めGPSが内蔵されてきているという技術的な進化が背景にあるのではないでしょうか。いわゆる車から集めた集合知を利用したビジネスに取り組んでいるといっても良いのではないでしょうか。
増田氏) 今鈴木さんがおっしゃった通りで、実はこのビジネスを始める大前提になるのは携帯電話にGPSが付いていることです。その前提がないと、「全力案内!」のユーザからのデータが取れないし、そもそも自分の位置が分からないとケータイでナビゲーションはできません。ケータイのGPSの広がりが前提となったサービスです。もう一つは、通信料金が安くなったことがあります。この2点が、この事業が大きくなるかのポイントです。
会社を立ち上げた頃、総務省の指導で2011年にはほぼ全てのケータイ電話にGPSを付けることになっていました。また、ケータイ3キャリアがパケット定額制を推進した時期でもあり、この2つの動きがビジネス立ち上げの背中を押してくれました。



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