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リレーインタビュー

大野 淳/田中宏明 電子タグ活用で、屋内GIS環境の基盤整備に取り組む ------ 総務省に聞く
総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課 研究推進室長
山内智生

インタビュアー神尾寿 神尾 寿(かみおひさし):通信・ITSジャーナリスト
日経BP社契約ライター、大手携帯電話会社の委託プランナー(新ビジネス/マーケティング担当)などを経て、1999年にジャーナリストとして独立。移動体通信とITSを中心として技術やサービス、ビジネスの動向について取材を行っている。 現在はジャーナリストのほかに、イード社の客員研究員。国際自動車通信技術展企画委員長、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤める。 著書は「TOYOTA自動車革命」(ソフトバンククリエイティブ)、連載は「ITMedia +D Mobile」「ビジネスメディア誠」、「レスポンス」などWeb媒体を中心に幅広く展開。新聞各紙、ビジネス誌への執筆や講演活動などを積極的に行っている。

2013年に10兆円の新市場を創出。このG空間プロジェクトにとって重要なのが、「屋内GIS環境」をどう構築するかだ。現在はIMES(屋内GPS)やWi-Fi測位など民間ベースのものが注目されているが、一方で、総務省は「ユビキタスネット社会の実現」の一環として新たな電子タグ活用や屋内GISのプラットフォーム構築の研究開発を行っている。これらの取り組みについて、通信・ITSジャーナリストの神尾 寿が、総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課 研究推進室長の山内智生氏に話を聞いた。

ユビキタスネット社会と電子タグ

神尾) 総務省では「ユビキタスネット社会の実現」を掲げていますが、これはどういったものなのか。総務省の取り組みをお聞かせいただけますか。

山内氏)それは、これまでの総務省の取り組みとしてという話と、政府全体の中での取り組みという話になるかと存じます。

研究開発の中に「ユビキタスネット社会の実現」という言葉がありますが、私どもは平成15年から電子タグを使ってユビキタスネットワークの構築に取り組んでいます。このユビキタスネットワークと対比されるのは、事業者のネットワークや無線LANなどです。個人が電子タグを持って非常に短い情報のやりとりをする通信、例としてはSuica(など交通IC)が代表だと思いますが、そういうネットワークが、いわゆる事業者の方、携帯電話などにもつながってくる、というイメージの研究開発をやっています。

あと先日出したばかりの私どもの情報通信白書では、ユビキタスという言葉はあまり使っていません。理由は簡単でして、売りにならなくなったからです(笑)。でも、逆の意味では、もはや私たちのインフラとして認知されていて、今さらユビキタスネットワークといわなくても、おなじみのものになっているということ。わざわざ分かりにくい言葉を使って明記しなくても、それぞれのシーンの中でユビキタスネットワークを使っていただける状態になっている、というのが私たちの認識です。

神尾)確かにユビキタスからクラウドに、ITビジネス全体のトレンドも移り変わってきました。あと政府全体のICTへの取り組みで考えますと、政権交代も興味深いところです。これによる変化もあったのでしょうか。

総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課 研究推進室長山内智生氏
総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課 研究推進室長山内智生氏

山内氏)そうですね。原口総務大臣が、原口ビジョンというものを出していますが、その中で、ICTの利活用を意識してください、そのための準備はできています、ということをいっています。「ICTの維新ビジョン」という形で書いていまして、ICTがいかに成長に寄与してきたか、これからも重要なファクターである、ということを述べているものです。ユビキタスに近い話としては“「光の道」100%”で、これは少し記事で出ていますね。

神尾)インフラ構築を主眼としたものから、利活用重視への変化ですね。

山内氏)ええ、そういうものや「ICTによる3%成長の実現」もあります。日本の場合は失われた10年・20年といった見方がありますが、ICTを使うことによって、3%の成長を確保できるのではないか。グリーン化にも寄与するのではないか。そういったものがICT全体の成長戦略として掲げられています。そのバックボーンとして、ユビキタスネットワークというものは見えてくると思います。実現するために、ある種空気のような、といえばいいでしょうか。あるのが当たり前のものとして存在する、ということじゃないかと思っています。

神尾)具体的には、主にどのような取り組みをされているのでしょうか。

山内氏)私どもの主な取り組みとしては、ユビキタスプラットフォームという技術開発があります。それから、これと直接的に関連する空間基盤、GISの利活用があります。

電子タグを代表とするセンサーのネットワークは、色々なものが出てきて使えるようになっていますが、ご存知のように(仕様や規格、運用方法が)個別バラバラです。例えば、Suicaは交通乗車券や電子マネー用途以外に使えるかというと、技術的には使えるようにはしているのですが、実際には使えない部分が色々あります。一方で、あるシステムで出てきたデータは、もちろんプライバシーの問題もありますが、他のシステムなど色々なところでも使いたい。特に行動の履歴管理などは、使い方を間違ってはいけませんが、色々なところで使えると様々な可能性になります。

そこで私どもとしては、まず基盤を作り上げることに取り組んでいます。例えば携帯電話のiモードやスマートフォンのアプリなど、そういったものからセンサー情報を取るのは可能だと思いますが、ユーザーがアプリケーションを意識しなくても、そのデータを取ってこれるような基盤を作り上げたいと思っています。

神尾)電子タグ情報の共通化、プラットフォームの構築ですね。

山内智生氏 山内氏)ええ。ここまでくるとGISとつながります。(機能やサービスとしては)どこで、いつ、どのロケーションか、ということを意識しなくてはいけない。後ほど詳しくお話ししますが、研究開発をやっていると、往々にしてみなさん、「測位はだいたいできているじゃないですか」とおっしゃいます。でも、落とし穴は屋内です。GPSが受信できる場所はいいかもしれないけれど、扉を越えた向こうはGPSが入らない、という所が多い。もう1つが、高さに関する情報です。ビルの何階にあるといった情報は、そもそもGPSでは対応できません。

神尾)屋内測位と三次元測位の課題ですね。カーナビは屋外・二次元でも問題ないですが、その他のモバイル機器でサービスを作ろうとすると、それらが重要になります。

山内氏)それらは"人が理解できる情報"というのでしょうか。北緯何度何分というのは、GISには分かる情報ですが、人間がそれを言われても「どこですか?」ということになります。人間に意味のある情報と紐付けるということは、特に屋内の場合、重要だと思っています。こういったことをGISの研究開発ではやっています。

まず、ICTの利活用を全体で進めていて、その中でユビキタスやGISについて、もっと使い勝手をよくする、ユーザーが意識しなくても、もっと使えるようにする、という研究開発を今、進めているのです。

電子タグリーダーではケータイ内蔵も視野に

神尾)電子タグのお話がありましたが、この分野は様々な技術や規格があります。例えば、RFIDやソニーの非接触IC「FeliCa」など民間主体でやっているものが有名ですが、研究レベルでは特定小電力通信とbluetoothを組み合わせた位置タグなどもあります。これら複数乱立する技術・規格に対して、総務省はどのような姿勢なのでしょうか。

山内氏)過去に、そういうものについて研究開発もやっています。今おっしゃったような電子タグについては、日本にはルールが存在しなかったわけです。

神尾)そうですね。いろいろな方式があって、総括して「 電子タグで位置情報サービスでも応用できないか」と考えられていました。

山内氏)今まで違う用途で使われていた周波数を、電子タグ用に使えるようにしたり、もっと使い勝手がよくなるように、出力の規制を一部緩和したりと、研究開発以外のところでも取り組みがありました。例えば、物流の現場では、コンテナが積み上げられて10メートルも離れている場合があります。こういった場所では、回転寿司の皿を読み取るようなRFIDシステムでは対応できません。積んであるコンテナの電子タグに向かって、ずーっとリーダーを振って、一気にコンテナに付けられた電子タグの情報を読み取るのですが、こういう場合には比較的出力の高い電子タグを利用しています。そして、その規制ですね。新しく使えるようにするとともに、混信が起きないように使い勝手を決める新たな規制(レギュレーション)を作るといったことも、総務省でやっています。

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